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越智康貴 越智康貴
越智康貴

花と夢 vol.20

越智 康貴

花と夢 vol.20

越智 康貴

この記事は
花と夢 番外編です
・探報記——THE ROWによるアートを巡る小旅行——
をお送りします!


 THE ROWの招待で、7月にオープンしたばかりの『リヒター・ラウム』と『浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA』を訪れました。アートを巡る小旅行です。

わんわんお

 軽井沢の駅に着くと、まだ夏の陽射しのもと、ひんやりとした冷気も漂っていて気持ちが良かった。結婚式場が近くにあるのか、駅はドレスアップした人々で賑わっていました。
 秋の木の実の季節も間近で、枝のそこここには、気の早いものがひとつふたつと色づいて、ほんのり浮かび上がって見えました。

 バスに乗り込んで、まずは『リヒター・ラウム』へ。WAKO WORKS OF ARTの和光さんによるツアーで、思い出話もあり、Gerhard Richterの人柄まで垣間見える時間を過ごしました。
 ものすごく怖いと思っている、去年、国立近代美術館で開催された個展でも観たガラスの作品もあって、また震えてしまいました——壊したくなってしまうんです。頭のなかでは、からだごと突っ込んで、ズタズタになる自分を想像してしまう。研ぎたての包丁に指先を当てる感覚で、味わいたくなる。一方、和光さんは、にこやかに解説してくださっていたけれど。

KARUIZAWAと名付けられた屋外作品

 それから『浅間国際フォトフェスティバル2023 PHOTO MIYOTA』へ。『IMA』の編集長の太田さんによるツアーでした。屋内外に、さまざまな作家の作品が展示されています。"フォト"フェスティバルとのことですが、写真の展示というよりは、手法も含めて”見ること/見られること”を改めて提案するようなものが豊富でした。太田さんが、ビルやブリッジの光を滲ませて撮った作品を前に「言われてみれば、街の灯りが涙で滲むような時もありましたよね」(意訳です)と仰っていて、僕は「(そんな夜……、あったっけ……?)わぁ、この作品、好きです」と楽しそうにしていました。
 心と言動が不一致になることばかりで、自分自身が混乱する始末。

Gregory Halpernの作品が好きでした

 FEUというレストランでの昼食は、THE ROWのツアーの為に、長野県の食材をメインに使ったメニューでした。
 鬼灯をはじめて食べました。大好きな漫画『xxxHOLiC 』では、主人公の四月一日(わたぬき)が鬼灯をちょうちんがわりに、百鬼夜行に参加します。お盆には、ご先祖様が帰って来られるようにと灯りの代わりに飾るもので、そんなことを考えながら食べました。

鬼灯が美味しかった

 僕は、自ら積極的に人の制作物を体験(体感?)することが多いです。でも、どちらかといえば、新しい考えに接するたびに、それが優れているかどうかは別として、消化するためなのか、苦しみを味わいます。場合によっては、長い時間、吐きけや頭痛やみじめな思いを経験するように。
 ところが、気がつくと今度は、新しい考えが自分のものとなって元気に走り回ります。他人が提案したことであるはずなのに、胸を張って自分のものにしてしまいます。おまけに、それに気がつかないこともしばしば。それからまたすぐに、体験を欲してしまいます。捗ります。自分でも止められないのです。

THE ROWによるインスタレーション

 軽井沢の旅は、実際には歩き回って、ずっと鑑賞し続けるものでしたが、日がな一日、ふりそそぐ陽光を浴びて木々のもとに座りこみ、のんびりと流れる風や、浅間山にかかる雲の影を空が変化するさまをぼんやりと楽しんだような気持ちをもって、東京へ帰りました。


うっかり作品の前に

お読みいただきありがとうございます。
少しずつ更新します。

越智


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